『伊勢物語』「狩りの使ひ」の品詞分解と現代語訳を知りたい!
ここでは、そんな人の悩みを解決します!
「狩の使ひ」は長いので一部と二部に分けます。
『伊勢物語』「狩りの使ひ」の用言と助動詞の品詞と活用形!
「狩りの使ひ」の用言と助動詞は、以下の赤字部分です。
【本文】
第一部
昔、男あり1/けり2。その男、伊勢の国に狩りの使ひに行き3/ける4に、かの伊勢の斎宮なり5/ける6人の親、「常の使ひよりは、この人よく7/いたはれ8。」と言ひやれ9/り10/けれ11ば、親の言なり12/けれ13ば、いとねむごろに14/いたはり15/けり16。朝には狩りに出だし立て17てやり18、夕さりは帰り19つつ、そこに来20/させ21/けり22。かくて、ねむごろに23/いたつき24/けり25。二日といふ26夜、男、われて、「逢は27/む28。」と言ふ29。女もはた、いと逢は30/じ31とも思へ32/ら33/ず34。されど、人目繁けれ35ば、え逢は36/ず37。使ひざねとある38人なれ39ば、遠く40も宿さ41/ず42。女の閨近く43/あり44/けれ45ば、女、人を静め46て、子一つばかりに、男のもとに来47/たり48/けり49。男はた、寝50/られ51/ざり52/けれ53ば、外の方を見出だし54て臥せ55/る56に、月のおぼろなる57に、小さき58童を先に立て59て、人立て60/り61。男、いとうれしく62て、わが寝る63所に率64て入り65て、子一つより丑三つまである66に、まだ何事も語らは67/ぬ68に帰り69/に70/けり71。男、いと悲しく72て、寝73/ず74/なり75/に76/けり77。
以下の表に、用言と助動詞の品詞と活用形をまとめています。
用語 | 品詞と用言 |
1.あり | ラ行変格活用・動詞「あり」連用形 |
2.けり | 過去・助動詞「けり」終止形 |
3.行き | カ行四段活用・動詞「行く」連用形 |
4.ける | 過去・助動詞「けり」連体形 |
5.なり | 断定・助動詞「なり」連用形 |
6.ける | 過去・助動詞「けり」連体形 |
7.よく | ク活用・形容詞「良し」連用形 |
8.いたはれ | ラ行四段活用・動詞「いたはる」命令形 |
9.言ひやれ | ラ行四段活用・動詞「言ひやる」已然形 |
10.り | 完了・助動詞「り」連用形 |
11.けれ | 過去・助動詞「けり」已然形 |
12.なり | 断定・助動詞「なり」連用形 |
13.けれ | 過去・助動詞「けり」已然形 |
14.ねむごろに | ナリ活用・形容動詞「ねむごろなり」連用形 |
15.いたはり | ラ行四段活用・動詞「いたはる」連用形 |
16.けり | 過去・助動詞「けり」終止形 |
17.出だし立て | タ行下二段活用・動詞「出だし立つ」連用形 |
18.やり | ラ行四段活用・動詞「やる」連用形 |
19.帰り | ラ行四段活用・動詞「帰る」連用形 |
20.来 | カ行変格活用・動詞「来」未然形 |
21.させ | 使役・助動詞「さす」連用形 |
22.けり | 過去・助動詞「けり」終止形 |
23.ねむごろに | ナリ活用・形容動詞「ねむごろなり」連用形 |
24.いたつき | カ行四段活用・動詞「いたつく」連用形 |
25.けり | 過去・助動詞「けり」終止形 |
26.いふ | ハ行四段活用・動詞「言ふ」連体形 |
27.逢は | ハ行四段活用・動詞「逢ふ」未然形 |
28.む | 意志・助動詞「む」終止形 |
29.言ふ | ハ行四段活用・動詞「言ふ」終止形 |
30.逢は | ハ行四段活用・動詞「逢ふ」未然形 |
31.じ | 打消意志・助動詞「じ」終止形 |
32.思へ | ハ行四段活用・動詞「思ふ」已然形 |
33.ら | 存続・助動詞「り」未然形 |
34.ず | 打消・助動詞「ず」終止形 |
35.しげけれ | ク活用・形容詞「しげし」已然形 |
36.逢は | ハ行四段活用・動詞「逢ふ」未然形 |
37.ず | 打消・助動詞「ず」終止形 |
38.ある | ラ行変格活用・動詞「あり」連体形 |
39.なれ | 断定・助動詞「なり」已然形 |
40.遠く | ク活用・形容詞「遠し」連用形 |
41.宿さ | サ行四段活用・動詞「宿す」未然形 |
42.ず | 打消・助動詞「ず」終止形 |
43.近く | ク活用・形容詞「近し」連用形 |
44.あり | ラ行変格活用・動詞「あり」連用形 |
45.けれ | 過去・助動詞「けり」已然形 |
46.静め | マ行下二段活用・動詞「静め」連用形 |
47.来 | カ行変格活用・動詞「来」連用形 |
48.たり | 完了・助動詞「たり」連用形 |
49.けり | 過去・助動詞「けり」終止形 |
50.寝 | ナ行下二段活用・動詞「寝」未然形 |
51.られ | 可能・助動詞「らる」未然形 |
52.ざり | 打消・助動詞「ず」連用形 |
53.けれ | 過去・助動詞「けり」已然形 |
54.見出だし | サ行四段活用・動詞「見出だす」連用形 |
55.臥せ | 作業四段活用・動詞「臥す」已然形 |
56.る | 存続・助動詞「り」連体形 |
57.おぼろなる | ナリ活用・形容動詞「おぼろなり」連体形 |
58.小さき | ク活用・形容詞「小さし」連体形 |
59.立て | タ行下二段活用・動詞「立つ」連用形 |
60.立て | タ行四段活用・動詞「立つ」已然形 |
61.り | 存続・助動詞「り」終止形 |
62.うれしく | シク活用・形容詞「うれし」連用形 |
63.寝る | ナ行下二段活用・動詞「寝る」連体形 |
64.率 | ワ行上一段活用・動詞「率る」連用形 |
65.入り | ラ行四段活用・動詞「入る」連用形 |
66.ある | ラ行変格活用・動詞「あり」連体形 |
67.語らは | ハ行四段活用・動詞「語らふ」未然形 |
68.ぬ | 打消・助動詞「ず」連体形 |
69.帰り | ラ行四段活用・動詞「帰る」連用形 |
70.に | 完了・助動詞「ぬ」連用形 |
71.けり | 過去・助動詞「けり」終止形 |
72.かなしく | シク活用・形容詞「悲し」連用形 |
73.寝 | ナ行下二段活用・動詞「寝」未然形 |
74.ず | 打消・助動詞「ず」連用形 |
75.なり | ラ行四段活用・動詞「成る」連用形 |
76.に | 完了・助動詞「ぬ」連用形 |
77.けり | 過去・助動詞「けり」終止形 |
『伊勢物語』「狩の使ひ」の現代語訳!
昔、男がいた。
(昔、男ありけり。)
その男が、伊勢の国に鷹狩りの使いとして行ったときに、伊勢の斎宮の親である人が、
(その男、伊勢の国に狩りの使ひに行きけるに、かの伊勢の斎宮なりける人の親、)
「いつもの使いの者よりは、この人はきちんともてなすように。」と言ったので、
(「常の使ひよりは、この人よくいたはれ。」と言ひやれりければ、)
親の言うことであったから、(斎宮はその男を)たいへん親切にもてなした。
(親の言なりければ、いとねむごろにいたはりけり。)
朝には狩りに送り出してやり、夕方に帰ってくると、そこ(=斎宮の御殿)に来させた。
(朝には狩りに出だし立ててやり、夕さりは帰りつつ、そこに来させけり。)
このように、親切にもてなした。
(かくて、ねむごろにいたつきけり。)
二日目の夜、男は、強いて、「逢いたい。」と言う。女もまた、決して逢いたくないとは思っていない。
(二日といふ夜、男、われて、「逢はむ。」と言ふ。女もはた、いと逢はじとも思へらず。)
けれど、人目が多いので、逢うことができない。
(されど、人目繁ければ、え逢はず。)
(男は)正使として来ている人なので、遠く離れた部屋にも泊めていない。
(使ひざねとある人なれば、遠くも宿さず。)
(男の部屋は)女の寝室の近くにあったので、女は、人が寝静まるのを待って、夜中(午前0時前後)に、男のもとにやって来た。
(女の閨近くありければ、女、人を静めて、子一つばかりに、男のもとに来たりけり。)
男もまた、(女のことを思って)寝られなかったので、外の方を見て横になっていると、
(男はた、寝られざりければ、外の方を見出だして臥せるに、)
月のおぼろな光の中に、小さい童女を先に立たせて、人(=女)が立っている。
(月のおぼろなるに、小さき童を先に立てて、人立てり。)
男は、とても嬉しくて、自分の寝ている所へ連れて入って、
(男、いとうれしくて、わが寝る所に率て入りて、)
深夜から午前二時頃までいたが、まだ何事も(打ち解けて)語り合わないうちに(女は)帰ってしまった。
(子一つより丑三つまであるに、まだ何事も語らはぬに帰りにけり。)
男は、とても悲しくて、(そのまま)寝なくなったのだった。
(男、いと悲しくて、寝ずなりにけり。)
後半は次のページに続きます!