『伊勢物語』「女はらから」(武蔵野の心)品詞分解と口語訳まとめ!

『伊勢物語』「女はらから」の品詞分解と口語訳は何?

『伊勢物語』の第41段の「女はらから」の品詞分解と口語訳が分からない

ここではそんな人の悩みを解決します!

『伊勢物語』の「女はらから」は、書籍によっては「武蔵野の心」「むさしのの心」と題させているものもあります。

「女はらから」の用言の品詞分解まとめ!

「女はらから」の用言は、以下の赤字部分です。

むかし、女はらから二人あり1/けり2。一人はいやしき3男の貧しき4、一人はあてなる5もたり6/けり7いやしき8持たる9、十二月のつごもりに、上の衣を洗ひ10て、手づから張り11/けり12
心ざしはいたし13/けれ14ど、さる15/いやしき16わざもなら17/ざり18/けれ19ば、上の衣の肩を張り20破り21/けり22。せむかたもなく23て、ただ泣き24泣き25/けり26
これをかのあてなる27聞き28て、いと心苦しかり29/けれ30ば、いと清らなる31緑衫の上の衣を見いで32やる33とて、紫の色こき34時はめもはるに野なる35草木ぞわか36/37/ざり38ける
武蔵野の心なる39/べし40

これらの用言の活用形は、以下の表にまとめています。

用言 品詞分解
1.あり ラ行変格活用動詞「あり」連用形
2.けり 過去・助動詞「けり」終止形
3.いやしき シク活用・形容詞「いやし」連体形
4.貧しき シク活用・形容詞「まどし」連体形
5.あてなる ナリ活用・形容動詞「あてなり」連体形
6.もたり ラ行変格活用・動詞「もたり」連用形
7.けり 過去・助動詞「けり」終止形
8.いやしき シク活用・形容詞「いやし」連体形
9.洗ひ ハ行四段活用「あらふ」連用形
10.張り ラ行四段活用・動詞「張る」連用形
11.けり 過去・助動詞「けり」終止形
13.いたし サ行四段活用・動詞「いやし」連用形
14.けれ 過去・助動詞「けり」已然形
15.さる ラ行変格活用・動詞「さり」連体形
16.いやしき シク活用・形容詞「いやし」連体形
17.ならは ハ行四段活用・動詞「ならふ」未然形
18.ざり 打消・助動詞「ず」連用形
19.けれ 過去・助動詞「けり」已然形
20.張り ラ行四段活用動詞「はる」連用形
21.て 完了・助動詞「つ」連用形
22.けり 過去・助動詞「けり」終止形
23.なく ク活用・形容詞「なし」連用形
24.泣き カ行四段活用・動詞「なく」連用形
25.泣き カ行四段活用・動詞「なく」連用形
26.けり 過去・助動詞「けり」終止形
27.あてなる ナリ活用・形容動詞「あてなり」連体形
28.聞き カ行四段活用・動詞「きく」連用形
29.心苦しかり シク活用・形容詞「こころぐるし」連用形
30.けれ 過去・助動詞「けり」已然形
31.清らなる ナリ活用・形容動詞「きよらなり」連体形
32.見いで ダ行下二段活用・動詞「みいづ」連用形
33.やる ラ行四段活用・動詞「やる」連体形
34.こき ク活用・形容詞「こし」連体形
35.なる 断定・助動詞「なり」連体形
36.わか カ行四段活用・動詞「わく」未然形
37.れ 可能・助動詞「る」未然形
38.ざり 打消・助動詞「ず」連用形
39.なる 断定・助動詞「なり」連体形
40.べし 推量・助動詞「べし」終止形

「女はらから」の口語訳!

昔、ふたりの姉妹がいた。
(むかし、女はらから二人ありけり。)

ひとりは身分が低く貧しい夫を、もう一人は身分が高い夫を持っていた。
(一人はいやしき男の貧しき、一人はあてなる男もちたりけり。)

身分の低い夫を持った方は、年の瀬に夫の上衣を洗って、自分で仕立てた。
(いやしき男もたる、師走のつごもりに上の衣を洗ひて、手づから張りけり。)

誠心誠意やったつもりだが、このような賎しい仕事に慣れていなかったので、上衣の肩を張る時に破ってしまった。
(志はいたしけれど、さる賎しき業も慣はざりければ、上の衣の肩を張り破りてけり。)

どうしようもなくて、ただ泣きに泣くばかりであった。
(せむ方もなくて、ただ泣きに泣きけり。)

これを、あの身分の高い男が聞いて、大変かわいそうに思ったので、とても気品のある緑色の上衣を見つけ出して女の夫へ贈る時に、
(これを、かのあてなる男聞きて、いと心苦しかりければ、いと清らかなる録衫の上の衣を見出でてやるとて、)

紫草の色濃い時は、目も遥かに、野にある草木の区別が出来ないものです
(紫の色濃き時はめもはるに野なる草木ぞわかれざりける)

「武蔵野の歌」と同じ心の歌だろう。
(武蔵野の心なるべし。)

 

以上が「女はらから」の口語訳です!

最後の二行は、そのまま読んでも理解しにくいところです。

まず、

  • 紫の/色濃き時は/めもはるに/野なる草木ぞ/わかれざりける

は、「妻への愛情が深いときは、妻に関係する人には親切にしてあげたいと思うものだ」という意味になります。

そしてそれに続く「武蔵野の心なるべし」は、

  • 紫の/ひともとゆゑに/武蔵野の/草はみながら/あはれとぞ見る

という「武蔵野の歌」と同じ心の歌であろうという意味になります。

この歌は、  「紫草の一本のために、武蔵野の草はすべて、愛しいものに見える」という内容です。

「女はらから」の「紫の/色濃き時は/めもはるに/野なる草木ぞ/わかれざりける」と同じ心境が語られていることが分かりますね。

 

以上『伊勢物語』「女はらから」の用言の品詞分解と口語訳でした!