『枕草子』「木の花は」の用言と助動詞の品詞と活用形!【第二部(梨の花〜)】
『枕草子』「木の花は」の用言と助動詞は、以下の赤字部分です。
【本文】第二部
梨の花、よにすさまじき1ものに2して、近う3/もてなさ4/ず5、はかなき6文つけ7などだにせ8/ず9。愛敬おくれ10/たる11人の顔などを見12ては、たとひに言ふ13も、げに、葉の色よりはじめ14て、あいなく15/見ゆる16を、唐土には限りなき17ものに18て、文にも作る19、なほさりともやうあら20/む21と、せめて見れ22ば、花びらの端に、をかしき23にほひこそ、心もとなう24/つき25/た26/めれ27。 楊貴妃の、帝の御使ひに会ひ28て泣き29/ける30顔に似せ31て、「梨花一枝、春、雨を帯び32/たり33。」など言ひ34/たる35は、おぼろけなら36/じ37と思ふ38に、なほいみじう39/めでたき40ことは、たぐひあら41/じ42とおぼえ43/たり44。
以下の表に、用言と助動詞の品詞と活用形をまとめています。
用言と助動詞 | 品詞と活用形 |
1.すさまじき | シク活用・形容詞「すさまじ」連体形 |
2.に | 断定・助動詞「なり」連用形 |
3.近う | ク活用・形容詞「ちかし」連用形「ちかく」のウ音便 |
4.もてなさ | サ行四段活用・動詞「もてなす」未然形 |
5.ず | 打消・助動詞「ず」連用形 |
6.はかなき | ク活用・形容詞「はかなし」連体形 |
7.つけ | カ行下二段活用・動詞「つく」連用形 |
8.せ | サ行変格活用・動詞「す」未然形 |
9.ず | 打消・助動詞「ず」終止形 |
10.おくれ | ラ行下二段活用・動詞「おくる」連用形 |
11.たる | 存続・助動詞「たり」連体形 |
12.見 | マ行上一段活用・動詞「みる」連用形 |
13.言ふ | ハ行四段活用・動詞「いふ」連体形 |
14.はじめ | マ行下二段活用・動詞「はじむ」連用形 |
15.あいなく | ク活用・形容詞「あいなし」連用形 |
16.見ゆる | ヤ行下二段活用・動詞「みゆ」連体形 |
17.限りなき | ク活用・形容詞「かぎりなし」連体形 |
18.に | 断定・助動詞「なり」連用形 |
19.作る | ラ行四段活用・動詞「つくる」連体形 |
20あら | ラ行変格活用・動詞「あり」未然形 |
21.む | 推量・助動詞「む」終止形 |
22.見れ | マ行上一段活用・動詞「みる」已然形 |
23.をかしき | シク活用・形容詞「をかし」連体形 |
24.心もとなう | ク活用・形容詞「こころもとなし」連用形「こころもとなく」のウ音便 |
25.つき | カ行四段活用・動詞「つく」連用形 |
26.た | 存続・助動詞「たり」連体形「たる」の撥音便無表記 |
27.めれ | 推量・助動詞「めり」已然形 係り結び |
28.会ひ | ハ行四段活用・動詞「あふ」連用形 |
29.泣き | カ行四段活用・動詞「なく」連用形 |
30.ける | 過去・助動詞「けり」連体形 |
31.似せ | サ行下二段活用・動詞「にす」連用形 |
32.帯び | バ行上二段活用・動詞「おぶ」連用形 |
33.たり | 存続・助動詞「たり」終止形 |
34.言ひ | ハ行四段活用・動詞「いふ」連用形 |
35.たる | 存続・助動詞「たり」連体形 |
36.おぼろけなら | ナリ活用・形容動詞「おぼろけなり」未然形 |
37.じ | 打消推量・助動詞「じ」終止形 |
38.思ふ | ハ行四段活用・動詞「おもふ」連体形 |
39.いみじう | シク活用・動詞形容詞「いみじ」連用形「いみじく」のウ音便 |
40.めでたき | ク活用・形容詞「めでたし」連体形 |
41.あら | ラ行変格活用・動詞「あり」未然形 |
42.じ | 打消推量・助動詞「じ」終止形 |
43.おぼえ | ヤ行下二段活用・動詞「おぼゆ」連用形 |
44.たり | 完了・助動詞「たり」終止形 |
言葉の意味
・すさまじきもの:興ざめするもの
・たとひ:たとえ
・唐土(もろこし):中国(昔の人は中国のことを唐土と呼んでいた)
・おぼろけなら:並
『枕草子』「木の花は」の現代語訳(口語訳)!【第二部(梨の花〜)】
梨の花は、とても興ざめなものとして、身近に取り扱うこともなく、ちょっとした手紙を結び付けたりもしない。
(梨の花、よにすさまじきものにして、近うもてなさず、はかなき文つけなどだにせず。)
愛嬌のない人の顔などを見ては、(梨のようだと)例えに言うのも、本当に、葉の色を始めとして、おもしろみなく見えるのだけれど、
(愛敬おくれたる人の顔などを見ては、たとひに言ふも、げに、葉の色よりはじめて、あいなく見ゆるを、)
中国では良いものとされていて、漢詩文にもつくるので、なにか理由があるだろうと、しいて見れば、
(唐土には限りなきものにて、文にも作る、なほさりともやうあらむと、せめて見れば、)
花びらの端に、趣深く美しい色つやが、かすかにぼんやりとついているようだ。
(花びらの端に、をかしきにほひこそ、心もとなうつきためれ。)
楊貴妃が、玄宗皇帝の使者に会って泣いた顔に似せて、
(楊貴妃の、帝の御使ひに会ひて泣きける顔に似せて、)
「梨の花の一枝が、春、雨を帯びている(ようだ)。」などと(白楽天が)言っているのは、
(「梨花一枝、春、雨を帯びたり。」など言ひたるは、)
並ひととおりの美しさではないのだろうと思うと、やはりたいそう素晴らしいことは、他に類がないだろうと思われた。
(おぼろけならじと思ふに、なほいみじうめでたきことは、たぐひあらじとおぼえたり。)
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