『枕草子』「中納言参りたまひて」の敬語を解説!誰から誰へのセリフなのか?

「中納言参りたまひて」の敬語と誰のセリフなのか知りたい!

清少納言『枕草子』「中納言参りたまひて」の敬語と、その敬語が誰から誰へ言ったセリフなのか分からない

ここでは、そんな人の悩みを解決します!

まずは「中納言参りたまひて」の登場人物を整理しましょう!

なぜ「中納言=藤原隆家」で「中宮=定子」なの?人物関係も!

「中納言参りたまひて」は、

  1. 藤原定子(中宮)
  2. 藤原隆家(中納言)
  3. 清少納言(書き手)

という三人の人物が登場する物語です。

・中宮とは?

「中宮」とは天皇の后(皇后)を表す言葉です。

清少納言はその時代の皇后である藤原定子に仕えていたので、「中宮」と言えば藤原定子しかいません。

・中納言とは?

「中納言」は位を表す言葉です。

  1. 左大臣・右大臣
  2. 大納言
  3. 中納言

という順で位が低くなっていきます。

中納言という位は、中宮である藤原定子の元を気軽に訪ねて行ける位ではありません。

なので、そのようなことが出来るのは、藤原定子の弟である藤原隆家だと予想できます。

また、作中にも「これは隆家が言にしてむ」という言葉があるので、藤原隆家であることが分かります。

・清少納言とは?

清少納言は、中宮である藤原定子に仕えていた人物です。

定子のお気に入りだったので、そばにいることがよくありました。

 

「中納言参りたまひて」で登場するのはこの三人だけです。

最も位が高いのは中宮で、最も位が低いのは書き手である清少納言になります。

こうした関係を押さえておくと、尊敬語と謙譲語も読み取りやすくなるでしょう。

ただ、「中宮」や「中納言」のように、肩書きで書かれると分かりにくいですよね。

実は『枕草子』では、それぞれの人物が何と表現されるかが決まっています。

数も多くはないので、覚えておくと物語が理解しやすくなるためおすすめです。

次は、「中納言参りたまひて」の敬語法を見ていきましょう。

「中納言参りたまひて」の敬語まとめ!

敬語のまとめを見る前に、3つの敬語法を軽くおさらいしておきましょう。

敬語法とは?

  • 尊敬語→相手の動作を高めることで、相手に敬意を表します。
  • 謙譲語→自分の動作をへりくだらせることで、相手に敬意を表します。
  • 丁寧語→「です・ます」を使い、丁寧に相手と接する言葉です。
例:「見る」
尊敬語
ご覧になる
謙譲語
拝見する
丁寧語
見ます

相手の動作を「上げる」のが尊敬語、自分の動作を「下げる」のが謙譲語です。

これを押さえられたら「中納言参りたまひて」の敬語を見ていきます。

以下の赤字部分が敬語です。

○原文

中納言参り1/たまひて2、御扇奉ら3/4/たまふ5に、「隆家こそいみじき骨は得てはべれ6。それを張らせて7むとするに、おぼろけの紙はえ張まじければ、求めはべる8なり。」と申し9/たまふ10。「いかやうにかある。」と問ひきこえ11/させ12/たまへ13ば、「すべていみじうはべり14。『さらにまだ見ぬ骨のさまなり。』となむ人々申す15。まことにかばかりのは見えざりつ。」と、言高くのたまへ16ば、「さては、扇のにはあらで、海月のななり。」と聞こゆれ17ば、「これは隆家が言にしてむ。」とて、笑ひたまふ18
かやうのことこそは、かたはらいたきことのうちに入れつべけれど、「一つな落しそ。」と言へば、いかがはせむ。

これらの敬語法と、誰から誰へのセリフなのかは以下の表にまとめています。

用語 敬語・誰から誰へ
1.参り 謙譲語・作者(清少納言)→定子
2.たまひて 尊敬語・作者→中納言隆家
3.奉ら 謙譲語・作者→定子
4.せ 尊敬語・作者→中納言隆家
5.たまふ 尊敬語・作者→中納言隆家
6.はべれ 丁寧語・中納言隆家→定子
7.参らせ 謙譲語・中納言隆家→定子
8.はべる 丁寧語・中納言隆家→定子
9.申し 謙譲語・作者→定子
10.たまふ 尊敬語・作者→中納言隆家
11.きこえ 謙譲語・作者→中納言隆家
12.させ 尊敬語・作者→定子
13.たまへ 尊敬語・作者→定子
14.はべり 丁寧語・中納言隆家→定子
15.申す 謙譲語・中納言隆家→定子
16.のたまへ 尊敬語・作者→中納言隆家
17.聞こゆれ 謙譲語・作者→中納言隆家
18.たまふ 尊敬語・作者→中納言隆家

以上、清少納言『枕草子』「中納言参りたまひて」の敬語&誰から誰へのセリフかのまとめでした!