『伊勢物語』「月やあらぬ」の品詞分解と現代語訳を知りたい!
ここでは、そんな人の悩みを解決します!
『伊勢物語』「月やあらぬ」の用言と助動詞の品詞と活用形!
「月やあらぬ」の用言と助動詞は、以下の赤字部分です。
【本文】
昔、東の五条に、大后の宮おはしまし1/ける2、西の対に住む3人あり4/けり5。それを、本意に6はあら7で、心ざし深かり8/ける9人、行き10/とぶらひ11/ける12を、正月の十日ばかりのほどに、ほかに隠れ13/に14/けり15。ありどころは聞け16ど、人の行き通ふ17/べき18所に19もあら20/ざり21/けれ22ば、なほ憂し23と思ひ24つつなむあり25/ける26。またの年の正月に、梅の花盛りに、去年を恋ひ27て行き28て、立ち29て見30、ゐ31て見32、見れ33ど、去年に似る34/べく35もあら36/ず37。うち泣き38て、あばらなる39板敷に、月の傾く40まで伏せ41/り42て、去年を思ひ出で43て詠め44/る45。月やあら46/ぬ47春や昔の春なら48/ぬ49わが身ひとつはもとの身に50してと詠み51て、夜のほのぼのと明くる52に、泣く泣く帰り53/に54/けり55。
以下の表に、用言と助動詞の品詞と活用形をまとめています。
用語 | 品詞と活用形 |
1.おはしまし | サ行四段活用・動詞「おはします」連用形 |
2.ける | 過去・助動詞「けり」連体形 |
3.住む | マ行四段活用・動詞「住む」連体形 |
4.あり | ラ行変格活用・動詞「あり」連用形 |
5.けり | 過去・助動詞「けり」終止形 |
6.本意に | シク活用・形容動詞「本意なり」連用形 |
7.あら | ラ行変格活用・動詞「あり」未然形 |
8.深かり | ク活用・形容詞「深し」連用形 |
9.ける | 過去・助動詞「けり」連体形 |
10.行き | カ行四段活用・動詞「行く」連用形 |
11.とぶらひ | ハ行四段活用・動詞「とぶらふ」連用形 |
12ける | 過去・助動詞「けり」連体形 |
13.隠れ | ラ行下二段活用・動詞「隠る」連用形 |
14.に | 完了・助動詞「ぬ」連用形 |
15.けり | 過去・助動詞「けり」終止形 |
16.聞け | カ行四段活用・動詞「聞く」已然形 |
17.行き通ふ | ハ行四段活用・動詞「行き通ふ」終止形 |
18.べき | 可能・助動詞「べし」連体形 |
19.に | 断定・助動詞「なり」連用形 |
20.あら | ラ行変格活用・動詞「あり」未然形 |
21ざり | 打消・助動詞「ず」連用形 |
22.けれ | 過去・助動詞「けり」已然形 |
23.憂し | ク活用・形容詞「憂し」終止形 |
24.思ひ | ハ行四段活用・動詞「思ふ」連用形 |
25.あり | ラ行変格活用・動詞「あり」連用形 |
26.ける | 過去・助動詞「けり」連体形 |
27.恋ひ | ハ行上二段活用・動詞「恋ふ」連用形 |
28.行き | カ行四段活用・動詞「行く」連用形 |
29.立ち | タ行四段活用・動詞「立つ」連用形 |
30.見 | マ行上一段活用・動詞「見る」連用形 |
31.ゐ | ワ行上一段活用・動詞「ゐる」連用形 |
32.見 | マ行上一段活用・動詞「見る」連用形 |
33.見れ | マ行上一段活用・動詞「見る」已然形 |
34.似る | ナ行上一段活用・動詞「似る」終止形 |
35.べく | 当然・助動詞「べし」連用形 |
36.あら | ラ行変格活用・動詞「あり」未然形 |
37.ず | 打消・助動詞「ず」終止形 |
38.うち泣き | カ行四段活用・動詞「うち泣く」連用形 |
39.あばらなる | ナリ活用・形容動詞「あばらなり」連体形 |
40.傾く | カ行四段活用・動詞「傾く」連体形 |
41.伏せ | サ行四段活用・動詞「伏す」已然形 |
42.り | 存続・助動詞「り」連用形 |
43.思ひ出て | ダ行下二段活用・動詞「思ひ出づ」連用形 |
44.詠め | マ行四段活用・動詞「詠む」已然形 |
45.る | 完了・助動詞「り」連体形 |
46.あら | ラ行変格活用・動詞「あり」未然形 |
47.ぬ | 打消・助動詞「ず」連体形 |
48.なら | 断定・助動詞「なり」未然形 |
49.ぬ | 打消・助動詞「ず」連体形 |
50.に | 断定・助動詞「なり」連用形 |
51.詠み | マ行四段活用・動詞「詠む」連用形 |
52.明くる | カ行下二段活用・動詞「明く」連体形 |
53.帰り | ラ行四段活用・動詞「帰る」連用形 |
54.に | 完了・助動詞「ぬ」連用形 |
55.けり | 過去・助動詞「けり」終止形 |
『伊勢物語』「月やあらぬ」の現代語訳!
昔、東の五条に、皇后様が住んでいらっしゃった、西側の屋敷に住んでいる人(女)がいました。
(昔、東の五条に、大后の宮おはしましける、西の対に住む人ありけり。)
それを、本意ではなく、(次第に)愛情を深めていった男が、訪れていましたが、
(それを、本意にはあらで、心ざし深かりける人、行き訪ひけるを、)
一月の十日ぐらいの頃に、他の場所へ身を隠してしまった。
(正月の十日ばかりのほどに、ほかに隠れにけり。)
居所は聞いていたけれど、人が行き通うことができそうな所でもなかったので、
(ありどころは聞けど、人の行き通ふべき所にもあらざりければ、)
やはりつらいと思いながら過ごしていた。
(なほ憂しと思ひつつなむありける。)
翌年の正月に、梅の花盛りの頃に、(男は)去年のことを恋しく思って(五条の屋敷へ)行って、
(またの年の正月に、梅の花盛りに、去年を恋ひて行きて、)
立って見て、座って見て、見るけれど、去年とは似るはずもありません。
(立ちて見、ゐて見、見れど、去年に似るべくもあらず。)
ふっと涙をこぼして、荒れている板敷に、月が傾くまで横になって、去年のことを思い出して歌を詠んだ。
(うち泣きて、あばらなる板敷に、月の傾くまで臥せりて、去年を思ひ出でて詠める。)
月は昔のままの月ではないのか。春は昔のままの春ではないのか。わが身だけはもとの身のままなのに。
(月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして)
と詠んで、夜がほのぼのと明ける頃に、泣きながら帰ったのだった。
(と詠み、夜のほのぼのと明くるに、泣く泣く帰りにけり。)
以上、「月やあらぬ」の用言と助動詞の品詞・活用形&現代語訳まとめでした!