『宇治拾遺物語』「児のそら寝」の品詞分解と現代語訳が知りたい!
ここでは、そんな人の悩みを解決します!
『宇治拾遺物語』「児のそら寝」の用言と助動詞まとめ!
「児のそら寝」の用言と助動詞は、以下の赤字部分です。
【本文】
これも今は昔、比叡の山に児あり1/けり2。僧たち、宵のつれづれに、「いざ、かひもちひせ3/む4。」と言ひ5/ける6を、この児、心寄せに聞き7/けり8。さりとて、しいださ9/む10を待ち11て寝12/ざら13/む14も、わろかり15/な16/む17と思ひ18て、片方に寄り19て、寝20/たる21由にて、いで来る22を待ち23/ける24に、すでにしいだし25/たる26さまにて、ひしめき合ひ27/たり28。この児、定めておどろかさ29/むず30/らむ31と待ちゐ32/たる33に、僧の、「もの申し34/候は35/む36。 驚か37/せ38/給へ39。」と言ふ40を、うれし41とは思へ42ども、ただ一度にいらへ43/む44も、 待ち45/ける46かともぞ思ふ47とて、いま一声呼ば48/れ49ていらへ50/む51と、念じ52て寝53/たる54ほどに、「や、な起こし55/奉り56そ。をさなき57人は、寝入り58/給ひ59/に60/けり61。」と言ふ62声のし63/けれ64ば、あな、わびし65と思ひ66て、今一度起こせ67かしと、思ひ寝に聞け68ば、 ひしひしと、ただ食ひ69に食ふ70音のし71/けれ72ば、ずちなく73て、無期ののちに、「えい。」といらへ74/たり75/けれ76ば、僧たち笑ふ77こと限りなし78。
以下の表に、「児のそら寝」の用言と助動詞の活用形をまとめています。
1.あり | ラ行変格活用・動詞「あり」連用形 |
2.けり | 過去・助動詞「けり」終止形 |
3.せ | サ行変格活用・動詞「す」未然形 |
4.む | 意志・助動詞「む」終止形 |
5.言ひ | ハ行四段活用・動詞「いふ」連用形 |
6.ける | 過去・助動詞「けり」連体形 |
7.聞き | カ行四段活用・動詞「きく」連用形 |
8.けり | 過去・助動詞「けり」終止形 |
9.しいださ | サ行四段活用・動詞「しいだす」未然形 |
10.む | 婉曲・助動詞「む」連体形 |
11.待ち | タ行四段活用・動詞「まつ」連用形 |
12.寝 | ナ行下二段活用・動詞「ぬ」未然形 |
13.ざら | 打消・助動詞「ず」未然形 |
14.む | 婉曲・助動詞「む」連体形 |
15.わろかり | ク活用・形容詞「わろし」連用形 |
16.な | 強意・助動詞「ぬ」未然形 |
17.む | 推量・助動詞「む」終止形 |
18.思ひ | ハ行四段活用・動詞「おもふ」連用形 |
19.寄り | ラ行四段活用・動詞「よる」連用形 |
20.寝 | ナ行下二段活用・動詞「ぬ」連用形 |
21.たる | 存続・助動詞「たり」連体形 |
22.いて来る | カ行変格活用・動詞「いでく」連体形 |
23.待ち | タ行四段活用・動詞「まつ」連用形 |
24.ける | 過去・助動詞「けり」連体形 |
25.しいだし | サ行四段活用・動詞「しいだす」連用形 |
26.たる | 完了・助動詞「たり」連体形 |
27.ひしめき合ひ | ハ行四段活用・動詞「ひしめきあふ」連用形 |
28.たり | 存続・助動詞「たり」終止形 |
29.おどろかさ | サ行四段活用・動詞「おどろかす」未然形 |
30.むず | 推量・助動詞「むず」終止形 |
31.らむ | 現在推量・助動詞「らむ」終止形 |
32.待ちゐ | ワ行上一段活用・動詞「まちゐる」連用形 |
33.たる | 存続・助動詞「たり」連体形 |
34.申し | サ行四段活用・動詞「まうす」連用形 |
35.候は | ハ行四段活用・動詞「さぶらふ」未然形 |
36.む | 意志・助動詞「む」終止形 |
37.驚か | カ行四段活用・動詞「おどろく」未然形 |
38.せ | 尊敬・助動詞「す」連用形 |
39.給へ | ハ行四段活用・動詞「たまふ」命令形 |
40.言ふ | ハ行四段活用・動詞「いふ」連体形 |
41.うれし | シク活用・形容詞「うれし」終止形 |
42.思へ | ハ行四段活用・動詞「おもふ」已然形 |
43.いらへ | ハ行下二段活用・動詞「いらふ」未然形 |
44.む | 仮定・助動詞「む」連体形 |
45.待ち | タ行四段活用・動詞「まつ」連用形 |
46.ける | 過去・助動詞「けり」連体形 |
47.思ふ | ハ行四段活用・動詞「おもふ」連体形 |
48.呼ば | バ行四段活用・動詞「よぶ」未然形 |
49.れ | 受身・助動詞「る」連用形 |
50.いらへ | ハ行下二段活用・動詞「いらふ」未然形 |
51.む | 意志・助動詞「む」終止形 |
52.念じ | サ行変格活用・動詞「ねんず」連用形 |
53.寝 | ナ行下二段活用・動詞「ぬ」連用形 |
54.たる | 存続・助動詞「たり」連体形 |
55.起こし | サ行四段活用・動詞「おこす」連用形 |
56.奉り | ラ行四段活用・動詞「たてまつる」連用形 |
57.をさなき | ク活用・形容詞「をさなし」連体形 |
58.寝入り | ラ行四段活用・動詞「ねいる」連用形 |
59.給ひ | ハ行四段活用・動詞「たまふ」連用形 |
60.に | 完了・助動詞「ぬ」連用形 |
61.けり | 過去・助動詞「けり」終止形 |
62.言ふ | ハ行四段活用・動詞「いふ」連体形 |
63.し | サ行変格活用・動詞「す」の連用形 |
64.けれ | 過去・助動詞「けり」已然形 |
65.わびし | シク活用・形容詞「わびし」終止形 |
66.思ひ | ハ行四段活用・動詞「おもふ」連用形 |
67.起こせ | サ行四段活用・動詞「おこす」命令形 |
68.聞け | カ行四段活用・動詞「きく」已然形 |
69.食ひ | ハ行四段活用・動詞「くふ」連用形 |
70.食ふ | ハ行四段活用・動詞「くふ」連体形 |
71.し | サ行変格活用・動詞「す」連用形 |
72.けれ | 過去・助動詞「けり」已然形 |
73.ずちなく | ク活用・形容詞「ずちなし」連用形 |
74.いらへ | ハ行下二段活用・動詞「いらふ」連用形 |
75.たり | 完了・助動詞「たり」連用形 |
76.けれ | 過去・助動詞「けり」已然形 |
77.笑ふ | ハ行四段活用・動詞「わらふ」連体形 |
78.限りなし | ク活用・形容詞「かぎりなし」終止形 |
「児のそら寝」の現代語訳!
いまではもう昔のことだが、比叡山(延暦寺)に子どもがいた。
(これも今は昔、比叡の山に児ありけり。)
僧たちが、夜の手持ちぶさたに、 「さあ、ぼた餅をつくろう。」と言ったのを、その子どもは期待して聞いた。
(僧たち、宵のつれづれに、 「いざ、かいもちひせむ。」と言ひけるを、この児、心寄せに聞きけり。)
かといって、作り上げるのを待って寝ないでいるのも、よくないだろうと思って、
(さりとて、しいださむを待ちて寝ざらむも、わろかりなむと思ひて、)
(部屋の)片隅に寄って、寝たふりをして、(ぼた餅の)できるのを待っていたところ、もうでき上がった様子で、(僧たちは)騒いでいる。
(片方に寄りて、寝たるよしにて、いで来るを待ちけるに、すでにしいだしたるさまにて、ひしめき合ひたり。)
この子どもは、きっと呼び起こしてくれるだろうと待っていると、ある僧が、「もしもし、起きて下さい。」と言うのを、
(この児、定めて驚かさむずらむと待ちゐたるに、僧の、 「もの申しさぶらはん。 驚かせたまへ。」と言ふを、)
うれしいとは思えども、ただ一度で返事をするのも、待っていたのかと(僧たちが)思うかもしれないと考えて、
(うれしとは思へども、ただ一度にいらへんも、 待ちけるかともぞ思ふとて、)
もう一度呼ばれてから答えようと、がまんして寝ていると、「おい、お起こしするな。幼い人は眠ってしまわれたよ。」と言う声がしたので、
(今一声呼ばれていらへむと、念じて寝たるほどに、 「や、な起こしたてまつりそ。幼き人は寝入りたまひにけり。」と言ふ声のしければ、)
これは困ったと思って、もう一度起こしてくれ、と思いながら寝て聞いていると、むしゃむしゃと盛んに食べる音がしたので、
(あなわびしと思ひて、今一度起こせかしと、思ひ寝に聞けば、 ひしひしとただ食ひに食ふ音のしければ、)
どうしようもなくて、時間が長く経ってから、「はい。」と返事をしたので、僧たちは笑いがとまらなかった。
(ずちなくて、 無期ののちに、「えい。」といらへたりければ、僧たち笑ふことかぎりなし。)
以上、『宇治拾遺物語』「児のそら寝」品詞分解と現代語訳まとめでした!