『枕草子』「木の花は」の品詞分解と現代語訳を知りたい!
ここでは、そんな人の悩みを解決します!
『枕草子』「木の花は」は少し長い話なので、三部に分けて紹介します。
記事の内容
- 第一部「木の花は〜なほさらに言ふべうもあらず。」(1ページ目)
- 第二部「梨の花〜たぐひあらじとおぼえたり。」(2ページ目)
- 第三部「桐の木の花〜必ず五月五日にあふもをかし。」(3ページ目)
『枕草子』「木の花は」の用言と助動詞の品詞と活用形!【第一部(この花は〜)】
『枕草子』「木の花は」の用言と助動詞は、以下の赤字部分です。
【本文】第一部
木の花は、濃き1も薄き2も紅梅。桜は、花びら大きに3、葉の色濃き4が、枝細く5て咲き6/たる7。藤の花は、しなひ長く8、色濃く9/咲き10/たる11、いとめでたし12。四月のつごもり、五月のついたちのころほひ、橘の葉の濃く13/青き14に、花のいと白う15/咲き16/たる17が、雨うち降り18/たる19つとめてなどは、世になう20心ある21さまに22/をかし23。花の中より黄金の玉かと見え24て、いみじう25/あざやかに26/見え27/たる28など、朝露にぬれ29/たる30あさぼらけの桜に劣ら31/ず32。ほととぎすのよすがとさへ思へ33ばに34や、なほさらに言ふ35/べう36もあら37/ず38。
以下の表に、用言と助動詞の品詞と活用形をまとめています。
用言と助動詞 | 品詞と活用形 |
1.濃き | ク活用・形容詞「こし」連体形 |
2.薄き | ク活用・形容詞「うすし」連体形 |
3.大きに | ナリ活用・形容動詞「おほきなり」連用形 |
4.濃き | ク活用・形容詞「こし」連体形 |
5.細く | ク活用・形容詞「ほそし」連用形 |
6.咲き | カ行四段活用・動詞「さく」連用形 |
7.たる | 存続・助動詞「たり」連体形 |
8.長く | ク活用・形容詞「ながし」連用形 |
9.濃く | ク活用・形容詞「こし」連用形 |
10.咲き | カ行四段活用・動詞「さく」連用形 |
11.たる | 存在・助動詞「たり」連体形 |
12.めでたし | ク活用・形容詞「めでたし」終止形 |
13.濃く | ク活用・形容詞「こし」連用形 |
14.青き | ク活用・形容詞「あをし」連体形 |
15.白う | ク活用・形容詞「しろし」連用形「しろく」のウ音便 |
16.咲き | カ行四段活用・動詞「さく」連用形 |
17.たる | 存続・助動詞「たり」連体形 |
18.うち降り | ラ行四段活用・動詞「うちふる」連用形 |
19.たる | 完了・助動詞「たり」の連体形 |
20.なう | ク活用・形容詞「なし」連用形「なく」のウ音便 |
21.ある | ラ行変格活用・動詞「あり」連体形 |
22.に | 断定・助動詞「なり」連用形 |
23.をかし | シク活用・形容詞「をかし」終止形 |
24.見え | ヤ行下二段活用・動詞「みゆ」連用形 |
25.いみじう | シク活用・形容詞「いみじ」連用形「いみじく」のウ音便 |
26.あざやかに | ナリ活用・形容動詞「あざやかなり」連用形 |
27.見え | ヤ行下二段活用・動詞「みゆ」連用形 |
28.たる | 存続・助動詞「たり」連体形 |
29.ぬれ | ラ行下二段活用・動詞「ぬる」連用形 |
30.たる | 存続・助動詞「たり」連体形 |
31.劣ら | ラ行四段活用・動詞「おとる」未然形 |
32.ず | 打消・助動詞「ず」終止形 |
33.思へ | ハ行四段活用・動詞「おもふ」已然形 |
34.に | 断定・助動詞「なり」連用形 |
35.言ふ | ハ行四段活用・動詞「いふ」連用形 |
36.べう | 当然・助動詞「べし」連用形「べく」のウ音便 |
37.あら | ラ行変格活用・動詞「あり」未然形 |
38.ず | 打消・助動詞「ず」終止形 |
言葉の意味
・しなひ(い):しなやかな曲線をしていること
・つごもり:月末
・ころほひ:頃。時分。
・いみじう:たいへん
・あさぼらけ:夜明け
『枕草子』「木の花は」の現代語訳(口語訳)!【第一部(この花は〜)】
木の花は、色の濃いとも薄くとも紅花がよい。
(木の花は、濃きも薄きも紅梅。)
桜は、花びらが大きく、葉色も濃く、枝が細く咲いているのがよい。
(桜は、花びら大きに、葉の色濃きが、枝細くて咲きたる。)
藤の花は、しなやかに長く垂れ下がっていて、色濃く咲いているのが、とても素晴らしい。
(藤の花は、しなひ長く、色濃く咲きたる、いとめでたし。)
四月の末や、五月の初めごろ、橘の葉で濃く青い葉に、花がたいそう白く咲いているのが、雨が少し降った翌朝などは、世に比類ないほど風情がある様子で趣深い。
(四月のつごもり、五月のついたちのころほひ、橘の葉の濃く青きに、花のいと白う咲きたるが、雨うち降りたるつとめてなどは、世になう心あるさまにをかし。)
花の中から黄金の玉かと見えて、たいそう鮮やかに見えているのなどは、朝露に濡れている明け方の桜に劣らない。
(花の中より黄金の玉かと見えて、いみじうあざやかに見えたるなど、朝露にぬれたるあさぼらけの桜に劣らず。)
(橘は)ホトトギスとゆかりの深い木とも思うからであろうか、やはり言いようもないほど素晴らしい。
(ほととぎすのよすがとさへ思へばにや、なほさらに言ふべうもあらず。)
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