『枕草子』「宮に初めて参りたるころ」の品詞分解と現代語訳を知りたい!
ここでは、そんな人の悩みを解決します!
「宮に初めて参りたるころ」は長いので三部に分けます。
第一部「宮に初めて〜」(1ページ目)
第二部「暁には〜」(2ページ目)
第三部「昼つかた〜」(3ページ目)
『枕草子』「宮に初めて参りたるころ」(第一部)の用言と助動詞の品詞と活用形!
「宮に初めて参りたるころ」の用言と助動詞は、以下の赤字部分です。
【本文】
第一部
宮に初めて参り1/たる2ころ、もののはづかしき3ことの数知ら4/ず5、涙も落ち6/ぬ7/べけれ8ば、夜々参り9て、三尺の御几帳のうしろに候ふ10に、絵など取り出で11て見せ12/させ13/給ふ14を、手にてもえさし出づ15/まじう16、わりなし17。「これは、とあり18、かかり19。それが、かれが。」などのたまはす20。高坏に参らせ21/たる22大殿油なれ23ば、髪の筋なども、なかなか昼よりも顕証に24/見え25てまばゆけれ26ど、念じ27て見28などす29。いと冷たき30ころなれ31ば、さし出で32/させ33/給へ34/る35御手のはつかに36/見ゆる37が、いみじう38/にほひ39/たる40薄紅梅なる41は、限りなく42/めでたし43と、見知ら44/ぬ45里人心地には、かかる46人こそは世におはしまし47/けれ48と、おどろか49/るる50までぞ、まもり51/参らする52。
以下の表に、用言と助動詞の品詞と活用形をまとめています。
用言と助動詞 | 品詞と活用形 |
1.参り | ラ行四段活用・動詞「まゐる」連用形 |
2.たる | 完了・助動詞「たり」連体形 |
3.はづかしき | シク活用・形容詞「はずかし」連体形 |
4.知ら | ラ行四段活用・動詞「しる」未然形 |
5.ず | 打消・助動詞「ず」連用形 |
6.落ち | タ行上二段活用・動詞「おつ」連用形 |
7.ぬ | 強意・助動詞「ぬ」終止形 |
8.べけれ | 推量・助動詞「べし」の已然形 |
9.参り | ラ行四段活用・動詞「まゐる」連用形 |
10.候ふ | ハ行四段活用・動詞「さぶらふ」連体形 |
11.取り出で | ダ行下二段活用・動詞「とりいづ」連用形 |
12.見せ | サ行下二段活用・動詞「みす」未然形 |
13.させ | 尊敬・助動詞「さす」連用形 |
14.給ふ | ハ行四段活用・動詞「たまふ」連体形 |
15.さし出づ | ダ行下二段活用・動詞「さしいづ」終止形 |
16.まじう | 打消推量・助動詞「まじ」連用形「まじく」のウ音便 |
17.わりなし | ク活用・形容詞「わりなし」終止形 |
18.あり | ラ行変格活用・動詞「あり」終止形 |
19.かかり | ラ行変格活用・動詞「かかり」終止形 |
20.のたまはす | サ行下二段活用・動詞「のたまはす」終止形 |
21.参らせ | サ行下二段活用・動詞「まゐらす」連用形 |
22.たる | 存続・助動詞「たり」連体形 |
23.なれ | 断定・助動詞「なり」已然形 |
24.顕証に | ナリ活用・形容動詞「けそうなり」連用形 |
25.見え | ヤ行下二段活用・動詞「みゆ」連用形 |
26.まばゆけれ | ク活用・形容詞「まばゆし」已然形 |
27.念じ | サ行変格活用・動詞「ねんず」連用形 |
28.見 | マ行上一段活用・動詞「みる」連用形 |
29.す | サ行変格活用・動詞「す」終止形 |
30.冷たき | ク活用・形容詞「つめたし」連体形 |
31.なれ | 断定・助動詞「なり」已然形 |
32.さし出で | ダ行下二段活用・動詞「さしいづ」未然形 |
33.させ | 尊敬・助動詞「さす」連用形 |
34.給へ | ハ行四段活用・動詞「たまふ」已然形 |
35.る | 存続・助動詞「り」連体形 |
36.はつかに | ナリ活用・形容動詞「はつかなり」連用形 |
37.見ゆる | ヤ行下二段活用・動詞「みゆ」連体形 |
38.いみじう | シク活用・形容詞「いみじ」連用形「いみじく」ウ音便 |
39.にほひ | ハ行四段活用・動詞「にほふ」連用形 |
40.たる | 存続・助動詞「たり」連体形 |
41.なる | 断定・助動詞「なり」連体形 |
42.限りなく | ク活用・形容詞「かぎりなし」連用形 |
43.めでたし | ク活用・形容詞「めでたし」終止形 |
44.見知ら | ラ行四段活用・動詞「みしる」未然形 |
45.ぬ | 打消・助動詞「ず」連体形 |
46.かかる | ラ行変格活用・動詞「かかり」連体形 |
47.おはしまし | サ行四段活用・動詞「おはします」連用形 |
48.けれ | 詠嘆・助動詞「けり」已然形 係り結び |
49.おどろか | カ行四段活用・動詞「おどろく」未然形 |
50.るる | 自発・助動詞「る」連体形 |
51.まもり | ラ行四段活用・動詞「まもる」連用形 |
52.参らする | サ行下二段活用・動詞「まゐらす」連体形 |
『枕草子』「宮に初めて参りたるころ」(第一部)の現代語訳!
中宮様の御所に初めて参上したころは、
(宮に初めて参りたるころ、)
何かと恥ずかしいことが数多くあり、涙も落ちそうなので、
(もののはづかしきことの数知らず、涙も落ちぬべければ、)
(顔の見える昼間ではなく)夜ごとに参上して、三尺の御几帳の後ろにお控え申し上げていると、(中宮様は)絵などを取り出して見せてくださるが、
(夜々参りて、三尺の御几帳のうしろに候ふに、絵など取り出でて見せさせ給ふを、)
手を差し出すことさえもできないくらい、どうしようもない。
(手にてもえさし出づまじう、わりなし。)
「この絵は、ああです、こうです。それが、あれが。」などと中宮様はおっしゃる。
(「これは、とあり、かかり。それが、かれが。」などのたまはす。)
高坏にお灯ししてある大殿油(=灯火)なので、
(高坏に参らせたる大殿油なれば、)
髪の毛の筋なども、かえって昼間よりもはっきり見えて恥ずかしいけれど、我慢して見たりする。
(髪の筋なども、なかなか昼よりも顕証に見えてまばゆけれど、念じて見などす。)
とても冷える時期なので、(中宮様の)差し出していらっしゃるお手がわずかに見えるのが、
(いと冷たきころなれば、さし出でさせ給へる御手のはつかに見ゆるが、)
たいそうつややかな薄紅梅色であるのは、この上なくすばらしいと、
(いみじうにほひたる薄紅梅なるは、限りなくめでたしと、)
(宮中のことを)知らない(私のような)里人の気持ちには、このような方もこの世にはいらっしゃるのだなあと、
(見知らぬ里人心地には、かかる人こそは世におはしましけれと、)
はっと気づかずにはいられないほど、お見つめ申し上げる。
(おどろかるるまでぞ、まもり参らする。)
次のページに第二部「暁には〜」の用言と助動詞の品詞・活用形&現代語訳をまとめています。