『枕草子』「中納言参りたまひて」の品詞分解と口語訳を知りたい!
ここではそんな人の悩みを解決します。
「中納言参りたまひて」の用言と助動詞の品詞分解まとめ!
「中納言参りたまひて」の用言と助動詞は、以下の赤字部分です。
○原文
中納言参り1/たまひ2て、御扇奉ら3/せ4/たまふ5に、「隆家こそいみじき6骨は得7てはべれ8。それを張ら9/せ10て参らせ11/む12とする13に、おぼろげの紙はえ張る14/まじけれ15ば、求め16/はべる17/なり18。」と申し19/たまふ20。「いかやうにかある21。」と問ひ22/きこえ23/させ24/たまへ25ば、「すべていみじう26/はべり27。『さらにまだ見28/ぬ29骨のさまなり30。』となむ、人々申す31。まことに、かばかりのは見え32/ざり33/つ34。」と、言(こと)高く35/のたまへ36ば、「さては、扇のに37はあら38で、海月(くらげ)のな39/なり40。」と聞こゆれ41ば、「これ、隆家が言にし42/て43/む44。」とて、笑ひ45/たまふ46。
かやう47のことこそは、かたはらいたき48ことのうちに入れ49/つ50/べけれ51ど、「一つな落とし52そ」と言へ53ば、いかがはせ54/む55。
これらの用言の活用形と助動詞の意味と活用形は、以下の表にまとめています。
用言 | 活用形 |
1.参り | ラ行四段活用・動詞「まゐる」連用形 |
2.たまひ | ハ行四段活用・動詞「たまふ」連用形 |
3.奉ら | ラ行四段活用・動詞「たてまつる」未然形 |
4.せ | 尊敬・助動詞「す」連用形 |
5.たまふ | ハ行四段活用・動詞「たまふ」連体形 |
6.いみじき | シク活用・形容詞「いみじ」連体形 |
7.得 | ア行下二段活用・動詞「う」連用形 |
8.はべれ | ラ行変格活用・動詞「はべり」已然形 |
9.張ら | ラ行四段活用・動詞「はる」未然形 |
10.せ | 使役・助動詞「す」連用形 |
11.参らせ | サ行下二段活用・「まゐらす」未然形 |
12.む | 意志・助動詞「む」終止形 |
13.する | サ行変格活用・動詞「す」連体形 |
14.張る | ラ行四段活用・動詞「はる」終止形 |
15.まじけれ | 不可能・助動詞「まじけれ」已然形 |
16.求め | マ行下二段活用・動詞「もとむ」連用形 |
17.はべる | ラ行変格活用・動詞「はべり」連体形 |
18.なり | 断定・助動詞「なり」終止形 |
19.申し | サ行四段活用・動詞「まうす」連用形 |
20.たまふ | ハ行四段活用・動詞「たまふ」終止形 |
21.ある | ラ行変格活用・動詞「あり」連体形 |
22.問ひ | ハ行四段活用・動詞「とふ」連用形 |
23.きこえ | ヤ行下二段活用・動詞「きこゆ」未然形 |
24.させ | 尊敬・助動詞「さす」連用形 |
25.たまへ | ハ行四段活用・動詞「たまふ」已然形 |
26.いみじう | シク活用・形容詞「いみじ」連用形 |
27.はべり | ラ行変格活用・動詞「はべり」終止形 |
28.見 | マ行上一段活用・動詞「みる」未然形 |
29.ぬ | 打消・助動詞「ず」連体形 |
30.なり | 断定・助動詞「なり」終止形 |
31.申す | サ行四段活用・動詞「まうす」連体形 |
32.見え | ヤ行下二段活用・動詞「みゆ」未然形 |
33.ざり | 打消・助動詞「ず」連用形 |
34.つ | 完了・助動詞「つ」終止形 |
35.高く | ク活用・形容詞「たかし」連用形 |
36.のたまへ | ハ行四段活用・動詞「のたまふ」已然形 |
37.に | 断定・助動詞「なり」連用形 |
38.あら | ラ行変格活用・動詞「あり」未然形 |
39.な(る) | 断定・助動詞「なり」連体形 |
40.なり | 推定・助動詞「なり」終止形 |
41.聞こゆれ | ヤ行下二段活用・動詞「きこゆ」已然形 |
42.し | サ行変格活用・動詞「す」連用形 |
43.て | 強意・助動詞「つ」未然形 |
44.む | 意志・助動詞「む」終止形 |
45.笑ひ | ハ行四段活用・動詞「わらふ」連用形 |
46.たまふ | ハ行四段活用・動詞「たまふ」終止形 |
47.かやう | ナリ活用・形容動詞「かやうなり」の語幹 |
48.かたはらいたき | ク活用・形容詞「かたはらいたし」連体形 |
49.入れ | ラ行下二段活用・動詞「いる」連用形 |
50.つ | 強意・助動詞「つ」終止形 |
51.べけれ | 当然・助動詞「べし」已然形 |
52.落とし | サ行四段活用・動詞「おとす」連用形 |
53.言へ | ハ行四段活用・動詞「いふ」已然形 |
54.せ | サ行変格活用・動詞「す」未然形 |
55.む | 意志・助動詞「む」連体形 |
『枕草子』「中納言参りたまひて」の口語訳!
中納言藤原隆家様が中宮定子様のもとへ参上されて、み扇を差し上げられたとき
(中納言参りたまひて、御扇奉らせたまふに、)
「私はとても素晴らしい扇の骨を手に入れました。
(「隆家こそいみじき骨は得てはべれ。)
それに紙を張らせてさし上げたいと存じますが、
(それを張らせて参らせむとするに、)
ありきたりな紙はこの骨に張られまいと存じますので、よい紙を探しているところです」とおっしゃる。
(おぼろけの紙はえ張まじければ、求めはべるなり。」と申したまふ。)
(中宮様が)「それは一体どのような骨ですか」とお尋ねになると、
(「いかやうにかある。」と問ひきこえさせたまへば、)
(隆家様が)「何から何まで素晴らしいものです。『今まで一度も見たことのないほどの骨だ』とみなさん申します。
(「すべていみじうはべり。『さらにまだ見ぬ骨のさまなり。』となむ人々申す。)
本当にこれほど素晴らしいものはまだ見たことがありません」と、一段と声を張っておっしゃったので、
(まことにかばかりのは見えざりつ。」と、言高くのたまへば、)
(私(清少納言)が)「それでは、扇の骨ではなくて、海月(クラゲ)の骨みたいですね」と申し上げたところ、
(「さては、扇のにはあらで、海月のななり。」と聞こゆれば、)
(隆家様は)「その言葉は私が言ったことにしてしまおう」と言われて、お笑いになった。
(「これは隆家が言にしてむ。」とて、笑ひたまふ。)
このようなことは、(公言すべきでない話で、またいかにも自慢話のようなので)きまりが悪いことの中に加えてしまうべきことだけれど
(かやうのことこそは、かたはらいたきことのうちに入れつべけれど、)
(みなさんが)「ひと言も書きもらすな」とおっしゃるので、どうにも仕方がない。
(「一つな落しそ。」と言へば、いかがはせむ。)
以上、「中納言参りたまひて」の用言と助動詞の品詞分解まとめと口語訳でした!